昔の逸品

  • 2014.12.23 Tuesday
  • 09:52

レアものを手に入れました。
ポータブルの練習用無音鍵盤。
88鍵ある、フルサイズのキーボードです。
ウィーンで作られたもので、製造年は1971年。
もちろん今も現役で、実際に使えます。
そのために入手したのですからね。
 

keyboard.jpg
これがその全容です。机の上に置いて使います。

作ったのはテオドール・オプレタールというおじさんで(すでに故人)、
私がウィーンで学生をやっていた頃、工房に行ったことがあります。
欲しかったのですが、当時のお財布ではまかなえませんでした。
40年がまんして、今やっとかなった夢です。
 
ウィーンの古き良き時代からの古風なアパートの一角にある雑然とした工房で
1台ずつ丹精を込めた手作業で作られていました。
工員さんたちが流れ作業で組み立てたものではありません。


mechanic.jpg
中はこんな感じ。持ち運ぶときにはこのように鍵盤を二つ折りにします。

友人のウィーン音大の教授に
 
「だれか持っている人知らない?」
 
と連絡したら
 
「じゃ、ちょっと古いけれど、僕のを譲ってあげる」
 
と、とんとん拍子に話が進んだのがラッキーでした。
故障したときの交換用スプリングもついているし、
オリジナルの肩掛けベルトまでついています。
為替レートが円安だったのがちょっと痛かったですが…。



交換用のバネ。1本ずつ手作りです。

keyboard1.jpg
肩紐をかけるとこんな感じ。レトロですね。
 
タッチの重さは約110グラムに調整されています。
21世紀のグランドピアノの標準は50グラム強ですから、かなり重い。
まさに訓練用
注意しないと、腱鞘炎になる恐れ、おおありです。


こうなってるのを…
keyboard2.jpg

こう開きます。蓋を開けると最初の写真のようになります。
keyboard3.jpg
 
昔のピアノの鍵盤は今のものよりずっと重く、
(とは言え、60グラムを越えることはあまりありませんでした)

弾きこなすためには筋力も必要でした。
だから、こうした訓練用鍵盤にも大きな価値があったのです。
国際コンクールに参加する時も、これがあればホテルの部屋で練習できます。
超絶技巧の大御所、フランツ・リストも携帯用鍵盤を持っていましたよ。
 

liszt-keyboard.jpg
リスト愛用の練習用鍵盤。ピアニスト高橋望さんのブログより画像お借りしました。

今のピアノは誰が弾いても同じように美しい音がします。
でも、昔はそうではなかった。
名手だからこそ出せる、深い響きというのが
歴然として存在していたのです。
やっぱりすごい、かなわないなあという感激がありました。
 
また、新品のグランドピアノがしっかりと鳴るまでには
数年の時間をかけて弾き込んでいったものです。
自動車も、新車を買った直後は慣らし運転が必須だった時代でした。
 
今ではすべてが買ったその日から使えるがスタンダードです。
誰が使っても同じ結果を得られるのも当たり前。
そういう時代なのでしょう。
それはそれですごいことですが…。
 
数年前、とあるリゾートクラブの会員になりました。
そんなにデラックスではありませんが
犬と一緒の部屋に泊まれる宿が複数準備されているクラブです。
 
かやにかパパ家の旅行パターンはヨーロッパでは主流のお籠もり型
同じ場所にずっと居座り、観光もほとんどなし。
部屋で本を読んだり、ビデオを見たり、原稿を書いたり、が主目的。
自宅でもできそうですが、やっぱり違います。
ふだんの社会的しがらみからすっかり解放されるので、ほっとできるのです。
夜も9時前には寝ちゃうことがほとんど。
テレビ、見ません。
目覚まし時計なしでまどろみます。
 
食べ物、飲み物、すべてを車に積んで持ち込み、耐乏生活を送ります。
宿では炊飯器を借りて、外食は極力なし、の毎日です。
ワンコも同じ部屋にいられるので、
まさに一家水入らず状態がずっと続きます。
 
以前は2泊、長くて3泊が標準だったのですが、
最近はもっと長めがいいなと思うようになりました。
でも、それだけの日数ピアノに触れていないと
指がなまってしまって、あとが大変。
レッスンをする時にも困ってしまいます。
 
その予防のためにも欲しいなあと思っていました。
たとえ使わなくてもあるというだけで安心できますからね。
 
実はコンサートステージでも使える、本格的な電子キーボードも持っています。
これも車に積めないことはないのですが、大きいし、重い。
オプレタールのキーボードは見てわかるように鞄みたいなものです。
 
「宝の持ち腐れ」にしないように気をつけねば!

これがその電子キーボードと運搬用ハードケース。機能を理解して使いこなすのも一苦労です。







 
コメント
こんにちは、初めてコメントいたします。ドイツに10年近く住んでおります。

無音鍵盤、それもとてもよい工房で製作されたものなのですね。お使いになられましたでしょうか。

実は私、探し回ったすえ中古品(お持ちのものよりもっと古いです)を見つけて注文したところです。もちろん、ドイツやオーストリアのものがあればそれがよかったですが、なにぶん出回っていなくて。イギリスのものです。

管楽器でコンクールにでる知人の伴奏をするのですが、移動して数日ピアノにほとんど触れられずに本番になりそうで、どうしたものかと思っていたところに見つけ、即手を上げました。
39鍵しかありませんが、基本練習や、ちょっと弾きづらい箇所の復習に役立てたいと思っています。
  • なおこ
  • 2015/05/12 9:51 PM
>なおこさま
無音鍵盤、愛用中。もちろん弾き心地はそれなりのものですが、役に立っています。実際のトレーニングとしての側面ももちろんですが、「これがあるから大丈夫」という精神面での安心も、とても大切ですね!
  • かやにかパパ
  • 2015/08/29 12:27 PM
かやにかパパ 様、お返事をありがとうございます。しばらく気がつかず、ごめんなさい。

コメントで触れたコンクールは5月末でした。現地到着後少しの時間ピアノに触れられましたが、出演者とちょっとあわせてみる、というぐらいのものでしたので、持参した無音鍵盤をホテルの部屋の机において、当日まで毎日カタカタやっておりました。


「これがあるから大丈夫」という精神面での安心も、とても大切ですね!

本当にそう思いました。無音鍵盤さん、ありがとう!
  • なおこ
  • 2015/09/09 12:58 AM
>なおこさま
「無音鍵盤」とは名ばかりで、実際は大変にうるさい。
あのカタカタカタという音は、実際の楽音よりタチが悪いみたいですね〜。
  • かやにかパパ
  • 2015/09/09 10:06 PM
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