ショパンを嗜(たしな)む(音楽之友社)

  • 2014.06.21 Saturday
  • 10:01

紀伊國屋書店の「書評空間 http://booklog.kinokuniya.co.jp/」の書評メンバーのひとりとして2005年より投稿を続けてきましたが、書店の方針で現在は閲覧のみで更新は休止になっています。

「ちりも積もれば山となる」とは良く言ったもので、書評のために読んだ本は118冊になりました。せっかく身についた読書習慣ですので、印象に残った本の読後感想は、《かやにかパパの打出の小槌》に掲載しておこう、と思い立ちました。書評空間での文体を継承した「である調」なため違和感があるかも知れませんが、ご寛容下さい。


 


ショパンを嗜む.jpg


恥ずかしながら、平野啓一郎の作品を読むのはこれが初めてだ。平野は1999年、京都大学法学部在学中に『日蝕』によって芥川賞を受賞している。その当時は最年少での受賞だった。

その後2002年に『葬送』という長編小説を上梓、現在は4分冊の新潮文庫として入手可能となっている。「ピアノの詩人」と称され、日本でもファンの多いポーランドの作曲家ショパンと、その友人で画家のドラクロアを軸にした小説だ。舞台はパリ。平野が得意とするフランスの情景である。

もちろんこれは小説で、史実の解明を追求した伝記ではない。司馬遼太郎による歴史小説のようなとらえ方をすれば良いだろう。著者の脳裏で練られた登場人物の描写がとても生き生きとしており、読者の心中にはつい「すべてそうであったに違いない」という確信が芽生えてしまう。

この長編が構想された際に作られた取材ノートの内容が1冊の本として、昨年末に出版された。もともとは『音楽の友』というクラシック音楽系の月刊誌に2009年から2010年にかけて連載された記事を集約したものである。

ショパンに関してはすでに多くの研究書が刊行されている。音楽の専門家が多くの労力と時間を費やしてまとめた成果には大きな価値があり、現代におけるショパン受容において大きな役割を担っている。さまざまなところに見解の違いはあるが、それが学問というものだろう。新しい知見に触れることにも、スリリングな興味を覚える。

平野の取材もこうした史実を踏まえてであることは当然だが、小説のためとなれば切り口が異なる。学問としてはどうでも良いことでも、文学作品を構築するためには欠かせないディテールがあるに違いないことは、想像に難くない。ショパンの日常の様子、はたまたどのぐらいのレッスン代をとっていたか、などの情報に触れることによって、私生活をのぞき見るような楽しみ方ができる。

ショパンは亡命先のパリで何回も住居を引っ越している。学問としてはその住所がきちんとわかり、そこでどの作品が創作されたかが確定できれば良いのだろうが、小説家にとっては違うのだ。たとえばポーランドからパリに来たばかりでまだ弱冠21才だったショパンは、ある建物の5階から別の建物の2階へ移転したのだが、

部屋が5階から2階になって、上がり下がりが楽になったというのは、一見、大した話でもないようだが、当時、彼の重要な収入源となりつつあった、一回二十フラン、一日五回で百フランという、ブルジョワの夫人や娘のレッスンのためには、決して蔑ろ(ないがしろ)に出来ない意味を持っていた。(p.23)

という考察には「なるほど」と思わせるものがある。 当時のフランの価値に関しても言及されている。それによると、ショパンのレッスンは1回2万円ほど、という計算になる。これでショパンのレッスンを受けられるのであれば、とてもお得な値段のように思えるが、当時は「高い」という評判だったようだ。パリではまだ駆け出しの若者だったショパンである。しかし逆に「高い」ところに、価値があったのだろう。これによって日銭10万円を稼ぎ出すわけで、決してあなどれない額である。毎月10日間働くだけで、かなり裕福な生活ができたに違いない。

こんなこと、あんなこと、家族のこと、また一般の伝記では語られないような脇役の人物に関することなど、「へえぇ」と感心するような情報がたくさん紹介されている。もっと身近にショパンを感じるためのコンパニオンとして、いかがだろうか。

 
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あわわわ…

  • 2014.06.09 Monday
  • 09:56

しばらく前のことになります。

老齢になって、記憶力も判断力もかなりアブナクなった両親のところに
シャキッとしたスーツ姿の男女が足繁く訪問してくるのです。

かやにかパパの妻、カヤニカままだけは
「どうもへんだ」

と思ったらしい。

で、かやにかパパから両親に事情を聞いてみました。

「銀行の人。遺言を代理遂行してくれる契約をしようと思うの。 今日ハンコを押せば、それで終わり。

…???

何となく不審に思い、
契約成立の前に銀行の人からくわしい話を聞くことにしました。

当時はまだ両親の成年後見をやっていなかったのですが、
「そろそろ考えないと危ないね」
と話していたところでした。
そのぐらい、さまざまなことがいい加減で、大雑把な父と母。

もちろん両親には両親で
「息子夫婦に遺産を丸投げするより、銀行さんにやっていただいた方が安心・安全だね」
と思う事情があったのでしょう。

はぁ、確かに人にはお見せできないような大喧嘩もしましたしね…。

しかし、犬も食わない“こみいった内部事情”はともかく、
銀行の狙いは別のところにあったのです。

まずは「ご要望通りにきちんと遺言を執行します」となると

遺言執行の暁には扱った額に応じて応分の「手数料」を頂戴します。

は、必然です。

この手数料、基本的には「総額の何パーセント」という計算になるのですが、こまかい付帯条項がついていて、場合によっては「エッ」というような金額が計上される恐れがあったのです。

とりわけ、遺産総額がそれほど多くない場合が問題です。
「銀行はぜったいに損しない」というのが鉄則ですから。

両親への説明はおそらくあったのでしょうが、
そこはまったく理解していないばかりか

「聞いてない」

と言い放ちました。記憶にないのですと。

しかし、銀行にとってもっと価値があるのはこれ。

手持ちの財産をとことん調べ上げ、塩漬けになっているものは銀行の関連会社を利用して投資にまわすようアドバイスする(「関連会社で」というところがポイントです。「すべてお任せいただけます」という常套句が大活躍)。
また相続が執行された時には誰がいくら受け取ったかをすべて把握できるので、将来の営業活動につながる。


相続の一連の手続きの中に「財産目録を作成する」というものがあるのですが、そこはプロ中のプロ、とっっっても詳しいリストがすでにできあがっていました。
よくぞここまで調べたものだ、という感じ。そして、

あっ、と驚く為五郎〜 ←すでに死語…

手持ちの現金の一部を、某関連会社の「保険」なるものにすでに組み替えてあったのです。それも「当初10年間は元本割れする」という金融商品でした。

もう80歳近くなったじいさんばあさんに「まだまだお元気そうですね。長生きできますよ。10年だけがまんすれば、その後はいつ解約してもお得ですよ〜」とか持ちかけたのでしょうねえ…。

案の定、母は10年待たずして他界しました。
ま、死亡給付金としてとりあえず満額を父が頂戴したので大それた発言は避けますが、
「何をさておいても儲ける」という銀行の商魂がさもしいです。

ワタクチはそういうのにはだまされませんよ〜(にかママ)

にかこ.jpg

こういう交渉に当たる銀行員は、だいたい若い人。
とても優秀で、銀行マンとしての前途も嘱望されているのでしょう。
「実績を上げる」ことは必須に違いない。社命ですから。

でも、職場ではいくら優秀に輝いたとしても、もっと他人への思いやりが欲しいなあ。
同じ社会の一員として。そして人生の先輩への敬意として。
こうした心遣いが、昨今の日本では希薄になってしまったように思います。
それが「グローバル」というものなのでしょうか。残念です。

そういえば、あれほど人を感動させた「絆」というかけ声も、色褪せてしまいましたね。
かけ声倒れの事象があまりにも多かった。
あまりの身勝手さ、無神経さを見てしまい、

絆なんて軽々しく口にするなっ

と言いたくなることも。

さてさて、遺言代理執行の契約に関しては

年寄り夫婦だから組み易し、と思って来ましたね。契約はしません。遺言執行用に作成した書類はすべて置いていって下さい。書類を作るのにかかった経費だけは払いましょう。後日請求して下さい。

ということに相成りました。
いや、経費を払うのはかやにかパパではないし…(^-^;)。

あ〜、あぶなかった。

腹は立ちましたが、ひとつだけ助かったことがあります。
それはその時点で「両親の戸籍調査」がすべて完了していたこと。

実は、自分たちで相続の手続きを行う際には、この書類を揃えるのに一番苦労するのだそうです。
両親ともに、それぞれの親(つまりかやにかパパの祖父母)や兄弟姉妹の戸籍謄本をすべて漏れなく揃えなければならないのです。

ものすごい田舎だったり、自治体が統合されてどこに請求したら良いかわからなかったり、あまりに古くて電子データになっていなかったり(そういうものは手書きの戸籍のコピーが発行されます)、などなど、経験がないとすごく苦労するとのこと。

なぜこのようなことが必要か、というと

「どこかに隠し子がいたりする事がある」

からだそうです。
それも「結構良くある話」と聞き及びました。
よく話に聞く、骨肉の争いに展開しちゃうやつです。

さすが天下の銀行さん、完璧に揃っていましたよ。
これだけは誉めよう。
母が逝去した際、ありがたく使わせていただきました。

教訓:銀行と税務署を信じてはいけません。

 
 

その後、友人から以下の情報をもらいましたのでご紹介。

地方の市役所は手なれたもので、ネット上に掲載されている申込用紙をプリントアウトして必要事項を記入し、手数料とともに送ったところ、程なく必要な謄本が送付されてきました。また、法務局などのお役所もネットで手続きを調べ、必要書類と申込用紙を持って相談に行くと、懇切丁寧に教えてくれます。以前は司法書士や行政書士の仕事だったのでしょうが、インターネットを利用すると素人でも何とかできる時代になったのですね。



笑い飛ばしちゃいましょう! 節分の時のカーヤ(赤い鬼のお面)と小太郎(白いお多福のお面)
節分.jpg
 
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