アイスショーデビュー
- 2015.05.15 Friday
- 16:38
始まりは、昨年のことでした。
フィギュアスケーターの町田樹君から、突然メールが舞い込んだのです。
世界を相手に闘い、大きく成長しつつある姿をテレビで応援しているところでした。
実は私、スポーツ観戦の中で好きなのはまずスケート、そして相撲です。
NHKで相撲の中継を見ていると、カヤニカままが毎回
デブを見るのがそんなに楽しいの? 食欲なくなるわ〜
とつぶやきます。ほっといてほしいです。
あれはあれで、おもしろいのだ。すぐ結果が出ますしね。
デブの集まり@国技館2008
フィギュアスケートの競技はもっと別の観点から観察しています。
何回転まわったか、ジャンプが完璧だったか、というのは
それほど気になりません。
「回転不足でした」
「踏み切るときのエッジが違ったので減点です」
なんて解説されても、そのあたりはよくわからない…。
ピアノの演奏を聴いている私には苦もなく認識できる
「装飾の開始音が間違っていた」
「和音の構成音がひとつ抜けていた」
ということが、普通の人にはまったくわからないのと同じでしょう。
それよりも、スケーターたちが銀盤の上に滑り出ていき、
そこで泣いても笑ってもただ1回の可能性に賭けて集中する姿は、
ピアニストがたったひとりでステージに歩み出て、演奏をする状況に酷似しています。
だから、目が離せなくなるのです。
こんなところで誰にも頼らずたったひとりで演技するのです@代々木体育館
試合の直前に何を考えているのか
コーチから何をアドバイスされているのか
どのようにして集中力を高めていくのか
その緊張と興奮をどのように保ち、演技に活かすのか
そしてすべてが終わったあとのインタビューで何を語るかにも
とても大きな関心を寄せています。
メンタルのことを真剣に勉強している選手の言葉には、さまざまな想いを感じられるのです。
そんな時、まさに世界の第一線で活躍中の町田君からメールをもらったのですが、
内容は
来シーズンのエキシビションプログラムに、私の演奏音源を使用したい
というもの。
具体的には私が以前のコンサートでライブ収録した
《シューベルトの即興曲第3番変ト長調》のことなのです。
↑クリックすると聴けますよ!
町田君は「この曲、すてきだよ」と誰かに聞いたあと、
ネット上に公開されている膨大な数の音源をチェックしたらしい。
その中に私の演奏も含まれていて、ヒットしたのです!
フィギュアスケートのエキシビションの通常の長さは3〜4分なのだそうです。
シューベルトのくだんの作品は6分弱。
カットする必要がありそうです。
でも、スケートの演技の際に流れる音楽、いつも力技で無理やり編集されていますよね。
すごく不自然。音楽家としては、ありえないセンスです。
というわけで
使っていただくのはとても嬉しく光栄なのですが、カットする場合は相談して下さいね。時間がわかれば私がカット編集したものを、再録音することもできますから。
と伝えました。
* * * * * * *
さてさて、このたびめでたく町田君の作品《継ぐ者》が公開されました!
シューベルトの即興曲に合わせて滑る町田君のお目見えデビューは
新横浜スケートセンターで開催される《Prince Ice World 2015》。
これです!
何と、カットなし。
町田君の「敢えてどこも切らず全曲を使用する」という英断です。
その中で
フィギュアスケートのジャンプ6種類をすべて飛び、それを作品としてベストの形にして表現したい
という意気込みが町田君のオフィシャルサイトに掲載されています。
私の拙い演奏を
優しくしなやかでありながら、力強さも感じられる
と評価してくれたのも嬉しいなあ。
演技、素晴らしかったです。
鑑賞したのは二日目の公演でしたが、技術的にも完璧(だったと思います…)。
やはり6分弱というのはかなり長い…。
また、自分の演奏を聴いているのは、落ち着きません。
むちゃくちゃ重低音が効いたシューベルトでした〜。
ここです!
公演中は撮影禁止なので、演技の写真は残念ながらありません。
でも、公演自体は5月17日(日)の午後2時からBSジャパンで放映されますので、そちらをご覧下さい。
町田君、あえて「競技には距離をおく」という道を選んだことによって
一段と成長したように思います。
これからが楽しみです!