出会い

  • 2016.03.24 Thursday
  • 13:23


旅先ですてきな青年、K君と巡り会いました。
青年と言ってもミソジですが、そうは見えない若々しさです。
話しているとまったく普通で、話もはずむのですが、
実は大変な難病を抱えていることを打ち明けてくれました。


igarashi2.jpg
K君とのツーショット。

筋痛性脳脊髄炎という病気です。
原因不明で、現時点では治療法もわかりません。

筋痛性脳脊髄炎とは脳内の血流に問題が生じる疾患です。
K君の場合は左脳への血流量が極端に減少していて、
そのため脳の活動が低下し、やろうとしてもできないこと、
困難なことがたくさんあるのだそうです。

たとえば“段取り”を組み立てて、効率よく行動すること。
これには、すごい努力と時間が必要になるのだそうです。

必死に脳をまわそうとする感じです。とても時間がかかります。
旅行のパッキングは、ほぼ徹夜状態になってしまうこともあります。


「洗髪」という行動ひとつとっても、よく考えないとできないそうです。

普通の人はそんなこと考えないじゃないですか。
僕もそうでした。でも今は違うのです。


そして、複数のことを同時に並行処理する、つまりマルチタスクがうまくできなくなってしまったとのこと。作業中に話かけられると意識がそちらに移ってしまい、もともとやっていたことを忘れてしまうのです。

左脳と言えば分析(認知)脳といわれ、論理的思考が得意な脳。
そこへの血流が不足しているのはつらいでしょう。
全身の疲労感、めまい、地面が揺れている感じなどが常にあるそうです。
しかし、いったい何がきっかけで発症したのかは、まったく不明とのこと。

一方、感情やイメージなどをつかさどる右脳はまったく正常どころか、機能不全の左脳を補おうとするかのように、とても活発になる時があるそうです。絵を見ていてとつぜん涙があふれたり、自分でも驚くぐらい感性が敏感になる時がある、と話してくれました。

会話していると、まったく普通です。
記憶が欠落するわけではなく、今日も昨日の話をそのまま継続できます。
行動にも何ら不自然なところはありません。

だから大変なんです。

なぜなら、K君が病気だとは誰も気づいてくれないから。
ふつうの人のように社会に対応して生活するのがすごく困難なのに、
外見からはまったくわかりません。

脳の症状のため、影響はさまざまな形であらわれるとのこと。
足が動かなくなることもあるし、思考がまとまらなくなることもある。

波があります。
体調が低下すると、どうしていいかわからなくなることも…。


出現する症状が固定していないため、
この病気が何かわかるまで相当の時間が流れてしまいました。
しかし筋痛性脳脊髄炎という病名も、まだ確実に確定したわけではないとのこと。

発症したのは大学2年の頃だったそうです。
病気に初めて気づいたのは

駅の階段を降りるときに「あれ、うまく足が動かない」という感覚がありました。
今ふりかえってみれば、あの時がスタートだったと思います。


その後症状は急激に悪化し、なかば精神疾患のような状態にまでなってしまったそうです。
というより、精神疾患である、と誤診されてしまったのです。

薬漬けにされた結果寝たきりになってしまい、まったく先が見えない状況が続きました。
皮膚がべろべろにむけるなど、強烈な薬の副作用にも大変苦しんだそうです。
自分だけは「これは精神障害ではない」と自覚していたものの、
誰もそれを信じてくれない日々がずっと続いたのです。

ようやく光が見えたのは、SPECT(スペクト)検査という、脳の血流状態を画像として見られる技術が実用化されてから。そうした画像、最近はよく目にするようになりましたが、まだ新しい、生まれたばかりの検査方法です。やっと信頼できる精度が得られるようになったのはここ数年のことらしい。


spect01.jpg
よくあるSPECT画像。(お借りしました。K君のではありません)

これによって初めて、K君の状態は精神疾患ではなく、
脳の血流障害に起因するものだとわかりました。

でもそれで解決したわけではありません。
大変なのはここからです。
病名もまだ確定したわけではないし、治療法も手さぐり状態です。
病名が確定しないと、具合が悪くても入院ができません。
足が動かなくても、足そのものは健康で、どんな検査をしても正常なのです。
「思考がまわらない」と訴えても、具体的な数値は出ないのです。

病名がつかない=治療の方法がない=入院できない、という現実に直面したK君。
難病指定にもなっていませんから、3割負担の健康保険以上のものは使えません。
本人にとって通常の社会生活は困難なのですが(たとえば会社に勤めるなど)、
病名欄に書く病名が確定しないので行政に申請もできず、福祉などあらゆる社会的サポートやセーフティーネットからこぼれ落ちているのがK君の現状です。

西洋医学での治療に少し距離をおき、なるべく薬に頼らない東洋系の療法を自分で捜し、
頑張っている姿はとても感動的でした。

いつか回復して元気になるんだ!

という夢をしっかりつかんで「まずは今日」と念じながら
常に前向きに生きています。

心配事も多いでしょう。
不安も山のようにあると思います。
ご両親も大変だと思います。
ひとりになって落ち込む時もあるに違いありませんが、
人前でそんな姿は見せません。

今できることをやるんです。
失ったものも多いけれど、かわりに得たものもたくさんありました。
同世代の人たちが得られないような出会いも、経験も。
小さな子供がその成長過程でひとつひとつ習得していくように、
自分ももう一回新しい人生をスタートして
できることをひとつずつ増やしている──そんな感じです。
脳そのものの病変ではなく、血流障害であることがわかったし、
その原因はどうも頸椎あたりにありそうだ、ということも見えてきました。
いつか元気になれる、と信じてます。
発症するまでは段取り大好きの行動派だったんですよ。
まずは今日を無事に過ごせるよう、精一杯がんばります。


こんな人生を歩んでいる人もいるんだ、応援しよう、と心から思いました。
K君からたっぷり元気をもらったのでした。ありがとう。


K君、がんばれ!!






 
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